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ゆめつなぎ2 - 愛のモノレール 1 by そらしま

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其の壱 ●我々家族は標高2230mの二子不二と言う山の観光地の村 に住んでいて、そこからふもとの町まではモノレールが運行 されていた。 . それは下から我々の村まで高地の露天風呂目当ての客が利 用する乗り物であり、我々の日常的な足だった。 . その架線はそうとう高い所に在り、山の高度と掛け合わせ ると1000mは下らない地点をゆっくりと毎日、音も無く移 動していたのだ。 . 雲の中、雨の中をそれは進んだ。時に何か小さな鳥の群れ や、蝶の大群の中へ突入することもあった。又、雨上がりの 虹に向かって進んで行くように見えることもあったのだ。 . それらの風景によって私は30年近くここにいても、この 場所を飽きることがなっかた。 . 冬のある日などは途中、通過する滝が大きな氷の塊を流し て落とす様はとても現実とは思えなっかた。おっと、ここで いっておかなければならなかった。これは昨日見た夢のはな しだった。現実ではない。私は時々同じ設定の夢を見るの だ。村も町も乗り物も同じ夢を。 . モノレールの軌道は傾いた土星の輪のように、二子不二の 周りを一周して低い円周が下の町の中を通過していた。 . したがって、それは環状であり、帰りは違う風景を楽しめ た。 . いや、もっと正確に言うと実は動いているのは二子不二の 方でモノレールと線路は固定していた。 . これは大掛かりな温泉テーマパークなのだ。 |
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其の弐 . ある冬の比較的暖かい日に、私は下の町に本を買いに出か けた。 . 車内は昼間なのですいていて、離れた所によく見かける少 女が、何かを瞑想するようにヨーガのポーズをとりながら座 っていた。その静止の上をストライプな光りだけがパタパタ と流れて行く。 . 私はと言うと、座ることなく窓ガラスの過ぎ去る風景の上 に映った逆にやって来るもう一つの風景の不思議な空間を見 つめていた。 . しばらく見ていたそのダブルイメージに平行感覚をなくし た私は、ガラスに映っているもう一人の私の世界へと引きず り込まれて行った。 . 「ねえ、一の君。少し僕と話しをしてみないかい。僕のこ とはニの君と呼んでくれないかい。」 . 「えっ、ああ、分かったよ、そうするよニの君。」 . 「ねえ、一の君、あそこに座っている少女だけど彼女は大 変な境遇にいるんだよ。両親は下の町で印刷屋を営んでいた んだけれど、もともと精神的に不安定な母親と、仕事にいき ずまった父親の病状が一度に悪化して働くことが出来なくな り、家族を養うために上の村のおみやげ屋でアルバイトを夜 中までして、又この列車で下の学校へ毎日通っているんだ よ。」 . 「へぇ。そう言う境遇には見えないね、どこまでも澄んだ 目をしているじゃないか。でも、そういった人達は僕らが思 っているよりも沢山いて、皆それぞれハンディを抱えている んだ。世界は見た目程、幸せじゃないからね。しかし君、な んで僕にそんな事を知らせる訳?」 . 「それはね一の君、君の店で彼女を使ってやったらどうか と思ってね。君の店で必要なのは瞳がどこまでも澄んだ、水 色なウエートレスじゃないのかい。」 . 「ああ、そうだ忘れていたよ。そうそう、人を捜していた んだ。それもそうだな。僕の店は白いギャラリーのような部 屋があるだけで時勢や客に合わせて、映画セットのように中 の道具や商品を変え、絶えずインテリアが変る流動的なもの だから、それに合わせて店員も、役者のような変化する個性 が必要で、そこいらのアルバイトでは勤まらず、絶えず人材 を捜している必要があるんだ。」 . 「そうだろ、君。僕がガラスの中から見通しているのは 彼女の変化するセンスなんだ。ほっておけば女優のように普 段はとんでもない服も平気で着ているんだ。訓練された無我 性があるんだ。」 . 「なるほど、分かった、分かった。」 . そう言って私は車両の後から彼女の前へとフラフラと歩み よった。 . 「ぶしつけでなんだけど、一寸、私の話を聞いてくれない かい。」 . 「ええ、なんでしょうか?」 . 「あのね、私は下の村で“ミセル”という店をやっている んだけれど今、その店の店員を捜しているんだ。あなたは下 の町で働いているんでしょ。どうでしょう、僕の店ではたら きませんか?今の給料の2倍はだしますよ。急な話で驚いた と思うけど、一寸、考えてくれませんか?」 . 「はぁ、はい、はあ。」 . 少女はドギマギした様子で返事をして、沈黙した。 . 私は名刺を渡して、その場から離れ次の駅で降りた。 . その日の夜、電話があって私と彼女は再び合う事になっ た。 . モノレールの駅で。 彼女は女の特性と権利で待ち合わせ時刻を過ぎても現れな かった。 . 私は駅のベンチに座り込んで磨かれたステンレスの蛇腹の 背もたれをぼんやりと見つめていた。駅前の和風の旅館が映 っている。それが蛇腹に映っている。それは同じ建物を幾重 にも積み重ねたように見え、あたかも五重塔がどんどん上へ 伸びて行ったように見える。 . その時、私は前に見た夢“ゆめつなぎ”の犬首を思い出し ていた。 . 犬首と一緒にその思いでの中で塔の天守閣に立っていたの だ。 . 前の夢の欠落部分を補うように。
其の参 . 私はあの夢によって、世界を手に入れたと言えるかも知 れない。あるいはその世界という空っぽは、初めから私のも のだし、私の本質だ。 . そのことにおいて、私と犬首は約束通りに夢の天守に立 ち、手に入れた世界を見渡していた。 . 遥か彼方に光る海があり、雷は轟き、稲妻が絡まるように 雲の表を這って行く。 . 「ねえ、犬首。お前は望み通り、この天守に立って、昔無 くした体も手に入れ、五体満足してスケールも自在に変えら れるようだけど、これから我々は何処へ行けばいいんだろ う。この終着駅を出て。」 . 「心配する事はないよ浦島君、まだまだ仕事は山程あるん だからね。今度は他のやつらをこの城へ、引っ張り上げなけ ればならないよ。そのために、この城は全ての階が待ち合い になっていて、目的も無くただただ待っている構造なだ。」 . 「うへ〜、君のその人の善さは何処から来るんだい。そん な空想は今では夢のテーマにも出て来ないのどかな昔のお経 の中のユートピアだよ。それにあらゆる天国が地獄に依存し ているように、理解は理解してないやつらに依存していて、 僕らがここに立っていられるのもそいつらのお陰さ。それが 本当の空っぽと言う事なんだ。」 「分かった、分かった。それじゃあこれからどうするの?こ のお話を新興宗教の教典にでもしたいのかい。」 . 「まあまあ、焦らないで。その前にこの話が、読者からの E-mailを待っている間に僕が待ちくたびれて寝て見ていた話 でもしようと思うんだ。“愛のモノレール”と言う。」 . そう言った私の顔を犬首が覗き見たところで我に帰り、顔 を覗いたのは待ち合わせた彼女だったことを知った。 . . 「あら、待ちました。ごめんなさいね。母が出がけにぐわ いが悪くなって、落ち着かせるのに時間がかかって。申し訳 ありません。」 . 彼女は予想していたような弁解をした。 . 「いいんだよ。僕も今来たところさ。」 . 私も言い古された受け答えをして、話しはじめた。 . 「とにかく、ここは寒いからモノレールに乗って話しをし ないかい。」 . 「ええ、いいですよ。」 . それから我々は次ぎの車両をまって、それに乗り込んだ。
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