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ゆ め つ な ぎ 9f - 台 風 の 天 使 3 (ハラハラーメン)

by そらしま

.其の一 

.き

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. 辰狐はどれほど長く、暗いトンネルの中、トルネードの中を、迷っていたのでございまし

ょうか。

. 途中、生死を賭ける、先は断崖の丘の上を憑き駆けて行くような恐い目に会ったような気

もしますが、それが夢なのかまた暗闇の中での自分の妄想なのかを選り分ける基準も持ち合

わせずに、ここまで辿り着いたのでございます。

. 気がつけば前方にはノコギリ山が遠望され、その裾の海をイージス艦が宙に浮きなが

蜃気楼のように新しい帰路に就こうとしていたのでございます。

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. 「あら、変わったお船が見える。あれが吉原にいた時、瓦版の連載イラストで見たバテレ

の黒船かしら?」

. そう想いながら歩き続けた重い腰を休めようと、洞窟の小さな出口からどうにか苦心

て外へと這いずり出たのでございます。

. そこには海がギラギラとそのウロコを逆立て、魚の背が海の柄を模したのか、海のが魚

の色を吸い取ったのか、魚を包み込むもう一つ大きな表皮となって、うねっていたのでござ

いました。

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. 「はい、カット! つぎのシーン0106の3(空蓮の伝授)まで30分の休憩。辰狐衣装替

えです。」

. ADの拡声器の声は岩に刺々しく反射したのでございます。

. 辰狐は衣装部の女の子に手を引かれて一緒に、テントの中に入ったのでございました。

青いテントは昼間の明るい光を透かして下の砂岩を清々しく水中の石のように見せて静ま

り、出番待ちの衣装がキュッ、キュッ、キュとドレッサーから引き出されたのでございま

した。

. 「次ぎこれでお願いします。襟のカバーは私が本番前に外しますからその時までそのま

まで。」

. そう言って女の子が引き出して来たのは、鹿鳴館の晩餐会でのバテレンのドレスのよう

な衣装で、辰狐はカカシのようにポーズして、言われるままに、なされるままに着ていた作

務衣を着替えさせられて、かつらを着けられてその間に紙コップの薄い甘辛い飲み物を与え

られてこれを飲んでいたのでございます。

. 「あら、咽がカラカラですごくおいしい、この変わった甘酒。」

. そう思いながらスポーツドリンクを飲んでいる辰狐は、吉原での世間知らずな身の回り

のおまかせ主義に戻って、何もかも明け渡しなお気楽な勝利で、滞りなく衣装替えも終了し

たのでございます。

. 衣装部の女の子にテントから押し出されて20、30人のスタッフの前に出た辰狐は、自分

は今度はバテレンの囲われの身で、とにかく素直に言う事さへ聞いていれば悪いようにはさ

れないだろうと直感して、戦後の日本国のように従順に外国の言う事を聞いて、考える事な

く働こうと心に決めたのでございました。

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. 「用意、スタート!」

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. 「いいか辰狐、今日お前にここまで来てもらったのはアミガサタケの秘術を伝授するた

めじゃ。」

. そう言うと空蓮は次のような事を語り始めたのでございます。

「アミガサタケの網の心は仏心のごとく己を空しくして他者を拒まず、何時もオープンな心

で己自身をさらし、穴だらけなア−ナンダの心にも似て、煙りの彫刻のように輪郭が他者と

解け合って、お前のような遊女を経て来た者には男に立てる術はすでに死以外に無いよう

に、それは始めから他者への中への死である輪郭で、ネットやウェブのような平面性の繋

がりを厭いはなれて煙りける、他方向への立体的拡散的喜びなのだ。」

. 「………?」

. 「いいか辰狐よ。お前がアミガサタケをバターでソテーしてチョコレートの粉をまぶし

てメキシカン風に食べようが、網の部分を空揚にして銀杏などを散らし、薄アンを掛けて普

茶料理風にして食そうが私は一向に構わないが、そこで忘れずにいて欲しいのはこのスカス

カなアミガサタケに己を見る事なのじゃ。」

. そう言うと空蓮は洞窟の岩影から明るい外へと出て辰狐の前にその姿を現したのでござ

いました。

. 「辰狐よ、そしてもう一つお前に言っておきたい大事な事がある。」

. 「はい、何でしょうかおっしょう様。」

. 辰狐は久しぶりに会えた空蓮の顔をまじまじと見つめて訪ねたのでございました。

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. 「お前は鎌倉の街で“久里浜ラーメン”という店を出せ!」

. 「はっ、はい、ラ−メ、メンて何でしょうか、おっしょう様。」

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