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. グジラは20mもあろうかと思われる体をブルブル打ち震わせて、逆光に体液を飛
び散らせながら“久里浜花の国”の広大な芥子畑の中に立っていた。
. それは試合前のボクサーのように拳を握りしめ、首をちじめながら中空を見つめ
て攻撃前の硬直を肉体へと呼び込んでいたのだ。
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. 一方、あの“ヤギばあさん”こと円 金(まどか きん)が呼び寄せた汐留高層
ビルの神々の気“みんなのたま”は、その巨大なスパークする皮膜を清涼飲料水の
コマーシャルのような青空の雲間から覗かせ、今は遅しと戦いのタイミングを見計
らっていた。
. グジラは待ちかねた時間を地団駄踏んでリセットし、体内で熱せられたパチンコ
玉を喉元まで押し上げ“みんなのたま”を睨み付ける。
. “みんなのたま”は雲からその丸い体を現わす。よくよく観察すればそれは透明
な人体風船の集合体で、丸くまとまり手を繋ぎ、グルグル、グラグラと回転し周辺に
放電しながら周りの雲も巻き込んで、常套ならざる塊となって神々しく降臨、光臨し
始めたのだ。
. グジラはそれが射的範囲に入る時が決戦の時だと、埴輪のように硬直して身構え
ていた。
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. しかし“みんなの玉”もその危うい距離を浮遊してグジラの先手必勝なるあせり
を見抜いていた。
. 自分としてはこれ以上降りなくても攻撃を始められる事を知っていた。
. グジラはとうとう待ちかねて、その喉元の熱く熟した鉄の玉を“みんなのたま”
めがけビュンビュンと発射しはじめた。機関銃めいた音が周りの小山にこだましお花
畑に反響する。
. ”みんなのたま”もここぞとばかりに意を固め、攻撃体制に入る。
. 今まで繋いでいた手を離して各人体風船は肛門から水素ガスの火を吹きなが次々
とグジラめがけて体当たりし始めたのだ。
. “みんなのたま”は自爆風船共同体だ。しかし各人体はその形態上直線では飛べ
ず、クルクルと回ってしまってなかなか命中しない。たまたま当ってもFRP製のグジ
ラは発火しにくいのだ。しかしポピー畑は戦場のお花畑と化し、火の玉昇り立つ修羅
場となって赤や白のケシ畑の上に真っ黒い風船の灰が降り注ぐ。それが高みから見る
と血の海に浮かんだ大陸の地図のように見える。それでも硝煙立ち篭める中次々と人
体風船は狂った蛾のように飛び回ってグジラの体を炎でコーティングするのだった。
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. そんなインターネットゲームをPC上でテストプレイしていたゲーム屋の社長木谷
は「ふむ、これは行けるぞこのゲームは。タイムリーな話題性もあるし、花と怪獣の
組み合わせも新鮮だ。どうだ後藤君はどう思う。」
. 「はい、社長、いけると思います。明日、小学生のモニターを呼んでやらせて見
ましょうか?」
. 「そうだな、そうしよう。それにPCソフトで上手く行けば色んな展開が考えられ
るしな。」と言って木谷と営業の後藤は午前中のもう一つの予定である汐留のスーパ
ーに出かけようとしていた。
. ゲーム屋だけではいつ倒産の憂き目にあうかも知れないこの頃の御時世に危機感
を持った社長木谷が先手を打って作っておいた部署“昼食会のメー子ちゃん”の商品
ヤギチーズのテスト販売を見るためである。
. スーパーに到着した二人は店長への挨拶もそこそこに乾物類コーナーのかげです
でに始まっていた“昼食会のメー子ちゃん”の着ぐるみとの記念撮影会を見守ってい
た。
. ニコニコVサインの母親に抱かれた3才位の女の子が無意識のうちにその着ぐるみ
の角に忌わしいデーモンやなまはげを思い出して「こわい、こわい」と泣きじゃくる
のを売り場の客達が怪訝な顔で見ているのをよそに、カメラを持った店員と母親だけ
が上機嫌でポーズしていたのだ。
. 「社長、やはりヤギのキャラクターはあまり評判がよくないようですね、角があ
りますんではい、小さい子供には。」
. 「後藤君、だから君はまだ新米なんだ。いいんだ、いいんだ子供が泣こうが喚こ
うが。いいか、逆に泣いた事で母親は“昼食会のメー子ちゃんを一生忘れないから
な。チーズを買うのは母親なんだからね、それに子供だって母親になる頃にはこのス
ーパーで泣き喚いた事を“昼食会のメー子ちゃん”のチーズを食べる時に思い出しす
といった具合さ。これこそ会社が生き延びるコツと言うものだよ。」
. 「なるほど、恐れ入ります。」
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. その汐留のスーパーの前を今しがたひょこひょこと歩いて行ったのは、あのヤギ
ばあさんだ。
. ヤキばあさんは秩父から逃れて浜松町駅から“ゆりかもめ”に乗って高層ビルの
部屋を探していたのである。
. モノレールの各駅で降りながらばあさんはここいらのビルの強力な人工神の気を
探っていて、特に高層な部屋の生物界を見下ろす音のない高山のような聖域を希求し
ていた。
. コンテナBOXを借りて一時的に荷物を保管していたのだが、何よりも早く部屋を
借りたらパソコンをつないで自分のホームページを覗いて、溜まったメールや“御買
い物BOX”から自動配信された買い物客リストに“すいかコロン”を送付する仕事が
あったし、秩父にいるころペンネーム“円 窓”で出版した“錬金術の正義をいかに
してとり行うか”が変に話題となり、ゲストブックで論争があらぬ方向へと独り歩
きしていて、管理者の自分としてもその収集に責任があったからだ。
. どうでもいいような論争の中に一つだけ円ばあさんの気になる流れがあった。
. アマスク団と言う団体らしき者達からの錬金術にかんする円 窓の考察への必
要以上のヒステリックな攻撃である。
. アマスク団は毎夜そうとうの長文で円の論文“錬金術の正義をいかにしてとり行う
か”に対するダメージを誇張して作り出していた。
. 『円窓氏のこの論文において、よしんば本当に錬金術の本質が密教系仏教やその足
元にある道教に近いものだとしても、我々には自然を操作して賢者の石と言う平安を
創りだせるなどとはとても思えず、そんなものは円窓氏の作り出した妄想であり、そ
の証拠に円窓氏自身は今は居場所も分らず世間から逃れている身であって、一体そん
な人物の言う平安などと言うものを、はいそうですかと素直に受け入れる程我々は退
化してはいないのだ。
. 我々アマスク団の主張する所は円窓氏とは正反対な“聖人の作り方-人工聖人創世
記“と言う本に明確に示されている。この小冊希望の方にはEメール用ダイジェスト
版を無償で配付している。』などといった長々しい書き込みに始まり、数名の別会員
と思われる低レベルの書き込みが続き、円ばあさんもほとほと困っていた矢先で、早
く住所を定めて諸問題の処理を始めなければならなかった。
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. そしてそのアマスク団とは何かである。
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